アナログ・ディレイの定番!EchoBoyについての解説、レビュー記事です!
これさえあれば、とりあえずディレイはオッケー!というくらいの存在であり、SoundToysの数あるプラグインの中でも、せめてこれだけでも持っておくべきプラグインです。
究極のエコーマシンは伊達ではございません!!
しかし、かなり自由度が高いプラグインなので、その分、全体像の詳細な説明は難しいです。なので、あくまで概要にはなってしまいますが、押さえる所は押さえた解説にはしました。とにかく使ってて楽しい、頼りがいあるプラグインなので、その魅力が伝えられたら!と。
ディレイ・プラグインの定番
プロユーザーはもちろん、世界中で使われており、モデリング系ディレイ・プラグインの代表格です。なんといっても、使いやすさ、幅の広さ、サウンドクオリティはトップクラス。これが一つあれば、様々なタイプのディレイのサウンドを作り出すことが出来ます。
Echo boyは様々なヴィンテージ機材をモデリングをしています。BOSSのDM-2やElectro Harmonixのmemory man, RolandのSpace Echoや、テープ・ディレイのEchoplexなどなど、アナログディレイの名機達を網羅した、多彩なラインナップです。
それらをモデリングしたことにより、単なる再現以上に自由なサウンドメイクが可能です。(ちなみにデジタル・ディレイのモデルも入ってはいますが、より本格的なレトロ・デジタルディレイ・サウンドを得たい場合は同社のPrimalTapがオススメです。Primal Tapの解説記事)
またコーラス機能部は、コーラスペダルの名機であるBOSSのCE-1を基にしており、ディレイ音に揺らぎ、拡がりを与えてくれます。そして、EchoBoy自体をコーラス・エフェクタとして使うことも出来ます。(後述)まさしくエフェクタの歴史が詰まったプラグインであり、SoundToysが誇る、ハードウェア愛が詰まっています。
各機能の紹介
ディレイの基本である、time(エコー音の間隔), feedback(エコーの回数)はもちろんですが、echo boyには更なる音造り、調整を可能にするためのパラメータが多く設置されています。
ひとつひとつ項目を解説するとともに、実際の使い方についても解説したいと思います。
基本的には、エンジニアだけでなくミュージシャンが使いやすいようにも設計されているのですが、その自由度の高さから、実際ちゃんと使いこなすのは少し大変です。
といっても実践的なプリセットがいろんな状況に合わせて、数多く準備されています。なので自分で音を作っていく必要性は実はそんなに無いのかもしれません。そういう意味では、直ぐ使えるプラグインではあります。
なのでプリセットを調整しながら使っていく、というのが現実的なスタイルです。こういう記事を書いておいてなんですが、自分自身のこのプラグインの使い方も、ほとんどそのような形になっています。調整するにしても、それなりの知識は必要ですが。
単純にモデリング元の機材の音をそのまま使いたい時のために、Style Tourというモデル名で統一されたプリセットフォルダも用意されています。とにかく、あらゆる状況に適した豊富なプリセットが数多くあるので、それらを積極的に使うべきです。
Echo Time
ディレイをテンポに対して、どういうタイミングで発音するか?という部分で、ディレイ・エフェクタの核となる部分です。TIME(時間)、NOTE(音符)、DOT(付点音符)、TRIP(三連)の4種類から選ぶことが出来ます。
LowCut, HighCut
フィルターになりますね。これによりディレイ音の大まかな音質をコントロールすることが出来ます。LowCutを上げれば、余分な低音がカットされて音の濁りが防げますし、HighCutを使えば、それだけで程よく高域が押さえられたアナログっぽい音質になります。
注意としては、EQのフィルターとは構造が違うので、数値が増えるごとに削られるという形式です。なのでHighCutする場合は、時計周りに回す必要があります。
Prime Numbers
これはONにすることで、ディレイ音が時間軸に沿って微妙に変化していくという、隠し味的効果を生み出します。基本的にディレイタイムの短い時、後述のコーラスとして使うときや、リバーブとして使うときなどに有効なようです。
Tap Tempo, Groove, Feel
TapTempoを使えばテンポをタップ入力でき、クリックなしの音源にも対応できます。もちろんDAWのテンポと同期したい場合は、MIDIをオンにすれば、それだけで大丈夫です。
Grooveは、ディレイのタイミングをより音楽的に調整するためのパラメータです。 ビート、テンポに対する裏のリズムの相対的なズレの調整になります。ややシャッフル気味のディレイなどにするときに役立ちます。FEELは発音そのものの、全体のタイミングをズラします。これは個人的にはあまり使わないですかね。
MODE
Echo Boyの柔軟性の象徴でもあるのが、MODE機能(写真下部)です。4つのディレイ方式が用意されています。単純なディレイであるSINGLE(シングル)やディレイ二基のDUAL(デュアル)。ピンポン・ディレイPING-PONGとディレイ音単位で調整可能なRHYTHM ECHOです。DUALは二基それぞれごとにタイムを設定できて、より複雑なディレイサウンドを作れます。
RHYTHM(リズム)は、その特徴を活かしてリバーブであったり、段々音の大きくなるディレイだったりと様々な創作ディレイサウンドを作り出すことが出来ます。
Saturation
Decapitatorは、元々echo boyをはじめとしたSoundToysのプラグインのアウトプット部に組み込まれているSaturation機能を独立させたものです。
基本的にはモデルを選び、ドライブ量を調整するというシンプルなものになります。よりアナログらしいサウンドにするには、DirtyやFatなどを。クセが少ないほうがいい場合などはCleanなどを選びます。Style editボタンで出てくる、decay, outputでかかり具合を調整できますが、ここを調整する必要は基本的にはないです。
Tweakで出来ること
Tweakボタンは左下についていますが、Tweakとは日本語でノブなどを摘んで微調整する、というような意味になります。ディレイの横の拡がり調整などを行うことが出来ます。モノ・ディレイやワイドなステレオ・ディレイにしたいときに有効です。
まさしく痒いところに手を伸ばすような微調整をするわけですが、このボタンを押すとGUI下部が開きます。ここはディレイのモードによって少しずつ異なります。ここでは主にステレオ感、拡がりやアクセントの調整ができます。なおMODEによって、パラメータは変化します。下の写真はDualモードでのTweak部分になります。
WIDTH(ウィドゥス)を増やすと、モノ=>ステレオという感じに、ディレイ音が左右に広がっていきます。dual, ping pongの際は、より複雑なステレオディレイに出来るわけですが、どのくらい広がるかの調整になります。
offsetは左右のディレイ音の微小なズレを生み出すことで、立体感を演出できます。ディレイの音量の強弱をaccentで変更できます。この二つを組み合わせることで、より複雑で有機的なディレイにすることが出来ます。
もちろんプリセットを使っていて、拡がりを狭くしたいときなどもここで調整します。 より細かいサウンドメイキングにおいて重要な部分です。
StyleとStyle Edit
EchoBoyにはモデリングを基にした、31ものスタイルが用意されています。基本的には、これを選択することで、十分様々なサウンドを得ることはできますが、より細かい調整についてはStyle Edit部分で調整することが可能です。
EQ, Diffusion, Wobble, Saturationの四項目になります。
EQ
EQもついています。またリピートによるディレイ音の音質変化をコントロールできるDecayノブもあります。他のディレイならDamp(ダンプ)とされる部分でしょう。これによって、より変化に富んだ、クセのあるサウンドにすることが出来ます。
しかし、単純なEQに関しては、個人的に内部のEQで調整すると収拾がつかなくなるという考えなので、ディレイをEQする場合は、独立したEQプラグインを挿すようにしています。
Diffusion(ディフュージョン)
このパラメータはリバーブでよく目にしますが、それと同様です。残響成分の密度や厚みに関わる部分です。高いほど複雑な、濃いリバーブになります。過剰なリバーブ音は音をにごらせるので、純粋なエコーサウンドを得たい場合は、ゼロにしてしまう方がいいです。
しかし、程よい残響を加えることで、さらに深みのあるディレイ・サウンドを得ることが出来ます。
loop,postはディレイのフィードバック部分に効かすか、最終的なエフェクトに効かすかの違い、一般的なディレイのあとにリバーヴ加える、という使い方なら、postにします。
Wobble
ディレイ音へのモジュレーションをコントロールする部分になります。モジュレーションの掛け方、波形も選択することが出来ます。ホントに何でも出来ますね。基本的にはOUTのスイッチをオンにすれば、いわゆるモジュレーションされたディレイサウンドにすることが出来ます。
Saturation( in Style Edit)
ここは正直、弄ることはほとんどないと思いまし、難しいです。歪み方の調整になります。各ギアのサチュレーション具合を調整するのに、このパラメータが使われているのだろうと思われます。
コーラスとして使う
プリセットとしても用意されていますが、Echoboyはコーラスとして使うことが出来ます。
そもそも、コーラスとは元音に対して、少し遅らせて(ディレイさせて)かつピッチを揺らがせた音をぶつけることで、音に厚みを与えるエフェクタなのでディレイでも再現できるわけです。
Echo Timeは短くなりすぎず、しかしディレイ音として認識できない程度に。そしてstyle edit内のwobbleでディレイ音にモジュレーションを与えていきます。Feed Backは最小にします。 基本的にはモノがいいと思うので、tweakでwidthは最小にしましょう。
というわけですが、プリセットの時点でクオリティが高いので、コーラスとして準備されているプリセットを使用するのが素直で楽です。
まとめ!
最近だと、簡易版であるEchoboy Jr.(上写真)が発売されましたが、サウンド自体は同じで操作が単純化されています。まずは、あれを試しに使ってみるのというのもいいと思います。自由度が低い代わりに手軽に、簡単に使うことが出来ます。
最後に。EchoBoyは、ディレイ系プラグイン決定版の1つに違いありません。とりあえずインサートすれば、それらしい音になってくれるわけです。それはプラグインの持っているサウンド、実践的なプリセット、かつ自由に調整できる柔軟性、という様々な要素が組み合わさってのものです。
アナログ系に関しては、とりあえずコレさえ持っていれば何とかなります。そういうプラグインこそが、音楽に集中させてくれる良いプラグインだと思います。