リズムこそが音楽において、もっとも原初的な要素であり、かつ一番重要であると断言出来ます。しかし、リズムというものを言葉で言い表すのは難しいですし、リズムにまつわる概念、用語は意外と見過ごされているかもしれません。
本記事ではそうしたリズムに関する用語の意味や、その認識を改めて確認していきます。
テンポ、BPM
音楽が進むスピードを表します。
一分間に何回打つか、でテンポを表現します。現代であれば、BPM (beat per minute) として、テンポが表されます。120BPMなら、一分間に120回カウントするスピード、という意味です。
現代の多くのDAWにはテンポ・トラックがついており、曲中のテンポを自由にコントロール出来るようになっています。
拍子
その楽曲のリズムがどういうまとまりを持ってるかの単位です。大きく分けて、偶数系と奇数系(三拍子系)に区分できます。例えば、4/4は4分音符が4つ分のグループを音楽的なイベントの一コマとします。6/8などはより細かい八分音符が6つ並びますが、3対3で2拍子的な性質を持ちます。
変拍子は、3以上の奇数による不規則な拍子で、5/4や7/8拍子などがあります。特にポップミュージックではあまり使われない拍子なので、驚きと新鮮さをもたらします。
が、最近では変拍子を積極的に使う流れもあるので、そう珍しいものでもなくなっています。曲の一部で変拍子を使う、という場合も含めれば、昨今の多くの楽曲で変拍子が使われています。
ビート
曲の主体となる、体感的なリズム単位を表します。
カントリー、フォークミュージックやマーチなどゆったりとした音楽はツービート、ジャズなどはフォービート。八分音符の刻みを主体とする曲はエイトビート。より細かいビート、ダンス系、ファンクなどよりリズミカルな音楽は16ビート。2000年以降の電子音楽における32ビート、という感じです。
以上のように、ビートは音楽ジャンルと密接に関係しています。テンポが速いほど、ビートは減少し、テンポが遅いほどビートが細かくなる、という傾向があります。
どのビートも別にそのリズムだけしか出てこない、というわけではなく、その楽曲、スタイルがどの譜割りを本質的なリズム単位としているか、ということです。
リズムの表と裏
リズムには表と裏があります。奇数拍が表、偶数拍が裏となります。英語では表をDown Beat(ダウン・ビート)、裏をUp Beat(アップ・ビート)と言います。
ポップミュージックでは特に裏にアクセントを置くことを重視します。その方が音楽的に面白いリズム感になるからです。スネアや手拍子は多くの場合、2拍目と4拍目に置かれます。しかし、人間の自然な意識としては、表のリズムも重要ですし、基本的には表にアクセントがくることも多いです(ドラムのバスドラム、クラッシュなど)。
西洋音楽は表を強調する、という風潮がありますが、ベートヴェンなどは意外と裏にアクセントを置いたりしますので、あくまでそういう傾向がある程度の認識の方が良いと思います。
グルーヴ
フラットなリズムに対して、どれくらいズレているか、ということで、ズレながらも有機的なリズムとしてはきちんとテンポは刻めているのがグルーヴ感のある演奏です。
上手いドラマーの演奏をDAWで見るとDAW上のグリッドと演奏の波形はズレているはずです。
DAW上のクリックと全くズレない、フラットな機械的なビートは人間の有機的リズムとはそぐわないと言えますが、あえてそういうリズムが求められる時は当然あります。
グルーヴについての考察は別ページ、グルーヴとは何か?グルーヴ感のある演奏とは?でやっています。
前ノリ、後ノリ
フラットに対して、どうズレているか。前だと前ノリ、後ろだと後ノリとなります。前ノリは迫り来るような印象で、後ノリはゆったりとしたブルージーな感覚をもたらします。意識して使いこなせるのが良いミュージシャンだと思います。(機械的な演奏は機械にやらせればよい!)