Soundtoys Decapitatorを徹底解説!

 

Soundtoysのプラグイン解説として、第一弾は大本命の”Decapitator”!

サウンドやその使い方について、一歩踏み込んだ内容にしています!

 

 いわゆるサチュレーター系、歪み系エフェクターで、このジャンルでは有名プラグインのひとつです。そんな“Decapitator”について、とことん解説してみたいと思います。

 使い方としては、音に厚みを持たせる効果もありますが、どちらかというと色合いを付ける、風味を付け加える、というのが主な目的になります。素材の味を生かす、調味料みたいな位置付けです。

 もちろん、それなりに強めに歪ませられますが、あくまでアナログな歪みです。より過激な歪みが欲しい方は、別のプラグインを探しましょう。

 

そもそも歪みとは何か?

 人間の聴覚にとって、好ましい歪みを指します。THD ( Total Harmonic Distortion )とは、元の音にない倍音が加算されて、音信号の波形が崩れるという歪みです。このTHDが良い歪み、とされます。

 この現象は本来あってはいけないことですが、結果的に聴覚上の音量感が増し、音が太くなったように聴こえます。これが、いわゆるアナログ機材によって引き起こされる歪みというものです。

 本プラグインは、それを再現したものになります。

 

アメリカのいろいろな音楽に

 これがホントにそうなんです。アメリカのポップミュージックになくてはならないプラグインの一つじゃないでしょうか。というか、Soundtoysのプラグインは大体そうですが。

 世界中で使われているでしょうが、そのサウンドは、やはりザ・アメリカンサウンドという感じです。

 いわゆるアメリカンミュージックにおける、ウォームな歪みサウンドを得るには、これが一番手っ取り早いかもしれません。 ヒップホップにしろ、ロックにしろ、EDMにしろ様々な曲、ジャンルで使うことの出来るプラグインです。

 

綺麗なだけじゃ、つまらない。

 アナログ機材内部を音信号が通ったときに起こる音質変化は、本来は起きてはいけないものです。なぜならマイク等で録って、変換されて機器を通り、記録される電気信号は忠実でなければいけないからです。

 デジタル録音が本格化したとき、このようなアナログ機材特有の音の変化、歪みはなくなり、音は“良くなる”と考えられていました。しかし現実にはそうではありませんでした。

 デジタル黎明期においては、それはデジタル技術がまだ未発達であったから、という部分もあったのかもしれません。しかし、アナログ機材における良い意味での音変化、歪みというのは、音楽的にも人間の耳にとっても、実際にはかなりいい効果を生み出していたわけです。ここらへんは長くなるので、省略します。

 現在では、デジタルオーディオ技術もかなり成熟してきて、ハイレゾなども含め、本来のデジタルサウンドのポテンシャルが発揮できるまでになりました。しかし、それでもなお、アナログ的歪みを求める人々がいて、このプラグインはそうしたアナログ的な歪みを得るためのものなのです。

 

 ここで注意が必要なのは、録音される音というのは、原則綺麗であるべきだということです。汚ければいいというわけではなく、コントロールされた歪みが気持ちいい、ということになります。

 いい音とは何ぞや!?でも書きましたが、いい音にはいろいろあって、場合によっては、多少クリアじゃない方が人間の耳にとってはよく聞こえる場合もある、ということです。

 

プラグインのサウンドについて

 それでは早速、プラグイン本体についてみていきましょう!そのサウンドは、いわゆるアナログ機材に通したときの総合的な音の変化を再現したものです。単に歪みだけを再現したプラグインではありません。

 真空管、プリアンプ、トランジスター、回路、トランスフォーマーなど各部品による、総合的な働きをモデリング。入力音へのよりリアルでダイナミックな反応までもが、再現されています。いわゆるパンチ感を与える、というように音が引き立つような質感を与えてくれるわけです。

 そして、5タイプSTYLE(スタイル)があります。詳しくは後述しますが、要はこの中から一つえらんで DRIVEのノブを上げる、というのがこのプラグインの主な操作です。個人的には、“A”で大体いけますね。色付けがあまりなく、程よくドライヴする感じがいいです。

 

その使い方とは?

 いろんな楽器、サウンドに使うことが出来ます。

 ボーカルをクランチな質感の音にしたり、ドラム全体をやわらかく歪ませつつ、厚みを出したり、ギターを歪ませたり、エレピを歪ませたり。 なんにでも使えますね。あとはDRIVEの調整しだいです。というか、基本的に、このプラグインはDRIVEのつまみをどれぐらい上げるかが、ある意味では全てです。

 

 実際の例を、少し聴いてみましょうか。ファンク風な曲にしてみました。一番最初の音源がミックス全体のサウンド。各パートは”Decapitator”だけを純粋にON/OFFしただけの聴き比べになってます。パート毎の音源は少し音量低めです。Decapitatorについては別に動画を作る予定です。

 

[参考音源]

ドラム :”E”

 これが一番わかりやすいですかね。全体が前に押し出され、厚い音に。スネアとバスドラがいい感じです。特にバスドラの音の伸びが良い感じです。低音が付加されるのが、Eタイプの特徴。

エレピ :”P”

 程よいクランチな歪みが加えられています。いわゆるウォームな感じに。

シンセリード :”P”

 OFFだと少し薄く耳に痛いですが、Decapitatorでハイを削り、太さも加えました。Studio One3 付属のMai Taiというソフトシンセですが、こうしたアナログ系プラグインで音作りをしていくと、アナログシンセっぽい音に十分できると思います。

シンセパッド :”A”

 同じくシンセパッドは、若干のサチュレーションを加えるにとどめています。というわけで、わずかな差かもしれませんが、こういうちょっとした味付けが積み重なり、ミックス全体の勢いであるとか、まとまりにいい効果を出してくれるのだと思います!

 

タイプごとの違いについて

スタイル モデル元 特徴など
A テープ・レコーダのプリアンプの歪み。 クセが少なく、いろんな音源に使える。汎用性高し。
E CHANDLER LIMITEDによるTG channel 分厚い低域が出る。ドラムに向いてる?
N NEVEのコンソールのインプット。 特に高域に癖がある。ブライトな音。ソースを選ぶ?
T 世界初となる、スタジオ向けの歪み生成機材。 三極管による、真空管サウンド。
P Tと同じ機材の五極管モードの再現。 奇数倍音による、特徴的な歪みサウンド。Tよりもクセが強い。

 簡単に図にまとめてみました。 どれがいい、というものではないですが、セレクターのより左にあるものの方が、 汎用性は高いです。右に行くほど、クセが強くなるような印象です。左三つは、そもそも歪ませるものではなく、右ふたつは歪ませる用の機材だからだと思います。

 

 ドラムの時は“E”を使うように意識している程度で、後は聞いた印象で選ぶようにしてます。やはり大体は“A”で済ますことが多いですかね。  基本的に一番クセがなく使いやすいですかね。

 Decapitatorをいろんなトラックに挿す場合は、意識して使い分けるといいのかな、と思います。結局は、使ってみないと違いはわかりません。ぜひデモを使ってみることをオススメします!

 

その他のコントロール類について

LOW CUT & HIGH CUT

 まずはフィルターです。 歪ませた場合、低い音高い音をそれぞれフィルターでカットすると、音が締まる場合があります。調整のためだけでなく、エフェクトとしても積極的に使えます。

THUMP

 ローカット・フィルターの設定された周波数をブーストします。レゾナンスというよりは、テープレコーダの特性を再現したもののようです。低域が盛り上がるので注意が必要!

STEEP

 これはHIGH CUT Filterに対して動作します。いわゆるレゾナンスがフィルターに付加されて、よりエフェクティヴな音になります。 個人的にこういう音を狙う場合は、別個にフィルターを用意するので(Soundtoysに専用フィルタープラグインありますし。)基本あまり使いませんね。

TONE

 これはギターのトーンと同じ感じです。全体のトーンを明るくしたり暗くしたりです。 場合によりけりですが、微調整するときに役立ちます。

PUNISH(パニッシュ)

 強めに歪ませるときに使います。 かなり潰れますね!音量には注意です!

MIX

 加工した音(Wet)無加工の音(Dry)を混ぜます。基本100%ですが、強めに歪ませる場合は、程よく元の音を加えることで、音の輪郭を保つことが出来ます。

 

まとめ!

 以上です。シンプルながらも、より細かく調整できるプラグインですが、かっこいいと思える音になるよう、直感的に操作するプラグインだと思います。

 根本的な音の改善を目的としたプラグインではない、ということだけ注意が必要です。飛び道具的ではあるので、無くても特に問題はないタイプのプラグインではあります。しかし一度使い始めたら、これナシのMIXは考えられなくなるような存在です。

 

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