音楽制作のためのパソコン(以下、PC)とは何でしょうか。厳密に言えば、特に音楽制作に特化した、専用のPCがあるわけではありません。
動画制作等の場合は、映像を処理するために専用のグラフィックカードが必要になる場合もあります。音楽制作の場合は、コンピュータと音響機器を繋ぐためのオーディオインターフェイスが必要になります。
オーディオインターフェイスは外部機器になるので、このページでは扱いません。詳細については上記リンクを別途ご覧ください。
現在ではコンピュータを中心とした音楽制作が一般的になっています。もしかしたら、もう楽器を使うことよりもコンピュータを使うことの方が、音楽を作る上で身近になっているかもしれません。
なぜパソコンが必要か。
人によっては、iPhoneであったり、タブレットで十分な場合もあります。Appleのガレージバンドだけでもいろいろできますし、多くの音楽用アプリが配信中です。しかし、より本格的な音楽制作のためには、PCやMACが不可欠です。
PCは現在では大分扱いやすく、安定していますが、それなりの知識が求められます。スマホがあまりにユーザーフレンドリーなために、あまりPCに触れてない人にとって、PCは恐ろしい存在になってしまっています。
もちろん、現在のPCも十分ユーザーフレンドリーであり、余計な部分はユーザーから隠されています。しかし、本格的なコトをやろうとするときに、そのフレンドリーさ(使いやすさ)は時として仇になり得ます。
なので、音楽制作においてパソコンについて知っておくべきコト!というテーマに基づいて、その構造や、仕組みなどについて、音楽家、ミュージシャンの観点より、分かりやすくまとめたいと思います。
本記事では、自作パソコンも意識していますが、別に音楽制作において自作をする必要はありませんし、BTOや市販でも大丈夫です。しかし、PC選びにしても、自分でパーツを取り替える場合においても、そのレベルの知識は決して無駄にはならないので、ぜひ参考になればと思います。
ハード部
コンピュータは機械なので電子部品の集まりです。いろいろなパーツが組み合わさり、動いています。実体を持った部分をハードウェア、目に見えず、実体を持たないコンピュータ上でのみ存在する部分をソフトウェアとして、順に説明していきます。
マザーボード
M/Bとも略されます。全てのパーツを載せたり繋げたりする全ての基盤となるパーツです。なんたってマザーですからね。価格帯によって、性能や付けられるパーツの数が変わったりします。自作で組み立てる際には、各パーツがマザーボードのチップセットに対応しているかどうかのチェックが重要になります。
CPU
コンピュータの本質は計算です。奇妙に思えますが、音楽にしろ、動画にしろ、インターネットにしろ全て計算で成り立っています。その計算を担うのがCPU(Central Processing Unit)です。
IntelやAMDといったメーカーが有名で多くのパソコンのCPUはこのどちらかです。
ユーザーとして、我々が気にすべきはクロックと型式です。
クロックとは一秒間で何回動作できるか?を表す指標で、計算力の目安となります。型式はそのCPUの世代や形式を表しており、これに対応したマザーボードでないと装着できません。(IntelだとLGA1151など。)
メモリ
よく作業机に例えられるパーツです。実際に各プログラムが起動すると、その中身がメモリに読み込まれ、CPUと連携することで動作します。なので、処理の規模やスピードに直接的な影響のある大事なパーツです。
机に例えられるのはそういうことで、つまり、広いほうが作業をしやすいし、また作業スピードも上がるということです。
世代、容量とクロックが重要です。
DDR5という風に世代があり、それぞれM/Bによって対応が違います。容量は少なくとも合計8GBはないと厳しいです。サンプル音源を多く使う場合は16GB以上あったほうがよいと思います。
メモリの仕事は短期的なデータの記憶とやり取りです。実際にプログラムが動くために必要な様々なデータを記憶するという役目があります。
HDD, SSD(大容量記憶媒体)
メモリが机だとすると、HDD, SSDは棚や引き出しになります。作り出したモノや使い終わったプログラムなどを長期的に記録します。
容量と読み書きスピード、コネクタが大事です。
容量はそのままどれくらい記憶できるかなので、このパーツの性能そのものを指します。また、読み書きスピードも重要です。HDDの場合はこれに回転数も加味します。PPMはどれくらい回転するか、です。HDDはリアルに磁気ディスクにデータを書き込むので、回転の速さが書き込みのスピードに影響を与えます。コネクタについては、対応するコネクタ(主にSATA)があるので、正しいコネクタにつなげないと本来の性能が出ないので注意です。
どのコネクタがどれくらいの個数あるのかは、M/Bによって異なりますので注意が必要です。
HDD, SSDの違い
SSDも普及が進み、安定化、低価格かが進みましたので、HDDのメリットはほとんどなくなってきたように思います。SSDが圧倒意的に速く、電力も少なく、静かです。しかし、理論上、書き込み回数に制限があります。今では、ハードディスクを簡単にコピーできるソフトなどもあるので、ころあいをみて交換していく、ということで対応出来るかと思います。
電源
当然ですが機械は電気で動きます。電気は生物にとっての血液であり、電源部は心臓にあたる部分だからです。なので、どのパーツも大事ですが、特に電源は目立たないとはいえ、手を抜いてはいけないパーツです。
コレにも容量があります。W(ワット)になりますが、常に容量分の電量が消費されるわけではありません。許容できる最大値です。余裕があることに越したことはないですが、必要な分さえあれば大丈夫です。
ソフト側の機能として、節電機能があったりしますが、それらはプログラムに悪影響を齎す場合があります。のので、やはり電源に余裕があるほうが安心です。
グラフィックボードを付ける際には、最低電量があるので、それ以上の電源を用意する必要があります。
ケース、クーラー
筐体、ケースは意外と大事です。内部配線や廃熱の点から、出来る限り大きいほうが良いと思います。
ケースによって、前面などにさせるUSB端子の数なども異なってきます。マウス、キーボード、MIDIキーボードなど使う機器に合わせて、選んだ方がいいです。(背面にPCIで増やすことも出来ます。)
またクーラーは音楽の場合、騒音の面から考えないといけない部分です。音楽制作であれば、そこまで廃熱が問題になることは、ないと思います。クーラーのファンの音を意外とマイクが拾ったりします。
ルーター、LANケーブル
直接的には関係ないとは言え、インターネット接続は無視できないので、少し触れます。
まずは回線とプロバイダーとの契約が必要です。モデムは回線業者に人からレンタルとして渡されます。それとルーターを繋ぎ、そこからさらにLANケーブルとPC背面にあるLAN端子をつなぎます。
ルーターを繋ぐ場合はその後、ルーターの設定があります。ルータを繋がない場合、回線会社から貰う接続ソフトをインストールして、それをつかってネットと繋ぐ必要が出てきます。無線Wi-fiがつかえるようになるので、ルーターがオススメです。
ソフト部
ハードウェアの次はソフトウェアです。目に見えない部分ではあるので、戸惑いも大きい部分です。しかし、単なる0と1の組み合わせ、とは思わない方がいいです。きちんとした成果物であり、差があります。
OS
コンピュータ全体を管理する基礎ソフトになります。マザーボードに組み込まれた各パーツを統合的にコントロールします。あらゆるプログラムはOSを前提にして動いています。
WindowsとMax OS Xが主であり、Linuxもありますが、音楽制作からするとやはりこの二つが主流です。
どちらを選ぶべきは一概には言えませんが、歴史的経緯からすると、Macのほうがより音楽家向きのようです。余計なことを考えないで済むような前提でOSが作られているからです。
DAW
コンピュータ上で音楽制作をするためのソフト。詳しくは↓の記事にて。
コンピュータ上で音楽制作をするためには、パソコンとDAWとオーディオインターフェイスが必要です。
プラグイン | VST AU AAX
DAW内にはエフェクタや音源が内蔵されています。しかし、外部のメーカーによるものもプラグインとしてDAW上で使うことが出来ます。
メーカーもプラグインもとにかく多いです。素直に定番のものを使った方が、時間もお金も無駄にしないと思います。本サイトでは、随時定番プラグインなどを紹介できたらなと思います。
windowsはVST、MACはAU(Audio Unit)という感じで、それぞれフォーマットが異なります。
大抵のメーカーはひとつのプラグインにつき、様々なフォーマットを用意しています。使う方をダウンロードして使うことになります。
エフェクターとしてのプラグイン
リバーブ、ディレイ、イコライザーなどの音を変化させたり、加工するエフェクターです。多く使うほどCPUに負荷が掛かります。現在のプラグインは高性能で低負荷のものも多いですが、たくさんのプラグインを同時に使いたい場合は高性能なCPUが必要です。
ソフト音源、ソフトシンセとしてのプラグイン
コンピュータ上のヴァーチャルな楽器として使うことが出来ます。DAW上のMIDIデータを読み込ませることで、演奏させます。アクティブ、モニター音にしてリアルタイムに演奏することも出来ます。
ソフト音源は録音されたサンプルを『上手く』再生することで、楽器を再現しているのに対し、ソフトシンセは、演算によってリアルタイムに音を生成します。
多くの場合、サンプル音源は低CPU、高メモリ、ソフトシンセは高CPU、低メモリとなります。
まとめ!
簡単にですが、音楽制作におけるコンピュータとその周りについてまとめました。ここに書かれていることを押さえておけば、大きな混乱は生まれないと思います。
各々細かい部分については個別の記事で解説しているので、詳しい内容についてはそちらをお読みいただければ幸いです。
では、よりより音楽ライフを!!