分かりにくいコンプレッサーとリミッターの違いについて解説します!
コンプレッサーは飛び出た音を叩く、
リミッターは穴に大きな岩を置く!
どちらも共に音量(音の大きさ)、ダイナミクスにかかわるエフェクターですが、違いが分かりにくく、どういう場面で使い分けるべきか混乱しがちです。
コンプもリミッターも目的がそれぞれ微妙に異なります。と同時に基本的な動作については、実はほぼ同じです。それぞれの具体的な動作について、分かりやすく解説していきます!
コンプレッサーはハンマー
コンプレッサーが持つ5つの役割、使い方についてはコンプレッサーのいろいろな役割についての解説記事です。コンプは音量を自動でコントロールする機械ですが、その使い道は多岐に渡ります。本記事ではリミッターと比較しつつ、コンプの基本的な動作の仕組みについての解説になります。
より感覚的に説明するために、ここでは『もぐらたたき』を例に考えていきます。
モグラか?これ?って感じな謎の生物ですが、お許しください。この場合、threshold(スレッショルド)は地面の高さになります。モグラが地面から顔を出すか出さないか、という状況をイメージしてください!
モグラたたきはどんなゲームか?穴から出てきたモグラの頭をトンカチで叩くゲームです。
穴から出ない限り、何も起こらない
左の絵では立った状態で地面から頭が出ていないので、トンカチで頭を叩かれていません。逆に右側では、穴から出た頭を叩かれています。コンプレッサーでも同様なことがいえます。
つまり、図.1のようにコンプレッサーも赤線で示すスレッショルドを超えない限り、動作しません!横軸がInput (入力音)の大きさ、縦軸がOutput (出力)の大きさです。Inputは右に行くほど入力音が大きく、Outputは上に行くほど音量が大きくなります。
デジタルにおいては、最大値を0としているので0に近いほど、音量は大きくなります。
-12dB < -6dB < -3dB < 0dBというような大小関係となるので注意が必要です。
Ratioは圧縮率
Ratioが1 : 1の時はつまり、入力と出力が等しいわけで、図.2の右側のようにスレショルドを超えたとしても、コンプレッションは起きません。
この場合、さきほどのモグラは地下で立ち上がって、穴(Threshold)から頭は出したけども、人間側に叩く気がなかったのでトンカチで叩かれなかった、という風に例えることが出来ます。
図.1の赤線から右側の緑線の傾きだけ、音量が下がることになるので、この場合、1dB分だけのGain Reduction(ゲイン・リダクション)が起きています。緑線の傾きこそがRatioであり、元の音量に対して、どれくらい音量を下げているかの比率を表す値になります。
Ratioが1より大きく、入力音がThresholdを超えて初めてコンプレッションが働きます。モグラの絵で言えば、穴から頭を出した場合のみコンプレッションが動作する、ということです。
Threshold以下なら、コンプレッサーがONであっても、図の左下の小さい灰色の正方形(-4dB)のように、入力=出力となるわけです。
コンプレッサーとは穴から出てきたモグラを叩くためのものです。超過音の音量を抑えた後にゲインを上げることで小さい音と大きな音の差を縮める、という圧縮効果をもたらします。小さい音は聞こえるようになるし、大きな音はうるさくなくなる、という結果になります。
リミッターは天井
コンプは音の大小の差を少なくする働きがありますが、それに対してリミッターは音量の最大値を確定するという働きをします。
下の絵は地面の穴に大きな岩が置かれており、モグラが穴から出ることすら出来ない状況を描き表したつもりです。
つまり、リミッターはそもそも穴から飛び出ないようにするものです。穴を超えてしまわないように重い岩を置きます。そうすると、もはや穴はなくなり、そこは“Ceiling”(天井)になります。どんなにジャンプしても頭が潰れ、首を痛めるだけです。岩が動くことはありません。
話は少し変わりますが、車の速度を制限するスピードリミッターという装置があります。エンジンにおけるリミッターは、どれだけアクセルを踏み込んでも制限された速度以上は出させない、というものであり、その性質は音楽におけるリミッターも同様のものになります。
モグラの頭の位置を音量の最大値とするならば、つまりリミッターによって音量の最大値が確定されるというわけで、天井の高さが音量の最大、となります。
図.3のように、青線が横軸と完全に平行になっている状態こそがリミッターといえます。こうなるとCeilingを超えた音量、つまり青いゾーンに含まれる音はすべて-3dBになります。どんな大きさだろうと、ぺったんこです
コンプは基本、少し凹ませる程度の使い方に対し、リミッターは強制的に音を完全に潰すので、過剰なリミッティングはサウンドクオリティの低下を招きます。
いくら原音を損なわないと謳っているリミッターでもです。なので、現実はそううまくいきませんが、リミッターを使わないことが最良のリミッティングとされます。
まとめ!
以上、図解を用いてコンプとリミッターの違いについて説明してみました。
コンプは穴から出てきた場合にのみ叩く。差を縮める。
リミッターは、そもそも穴から出ないようにする。天井を作る。
音量を下げる、という基本的な動作は一緒であっても、このように目的がすこし異なっているということです。
なるほど、今までで一番わかりやすいイメージでした❗️
レシオが存在するかどうかの違いなのですね。なるほど