音楽制作における等ラウドネスレベル曲線について | ラウドネス曲線

 等ラウドネスレベル曲線とは、人間の聴覚における重要な特性を表す曲線です。音の高さごとの聞き取る能力を表しています。

 この曲線が音楽制作、特にmixやmasteringにおいて重要である事はわかっていても、じゃあ実際に、それをどう具体的にミックスに反映していけばいいのかという事はなかなか分かりにくいです。ラウドネス曲線とは・・・

mixにおいて、全体の周波数バランス(Frequency Balance)を
調整する際の基準となるのが”等ラウドネスレベル曲線”

ということになりますが、以下、説明していきます!

違う高さの音が等しく聴こえるために

loudness curve figure
図は産総研の該当ページより引用

 等ラウドネスレベル曲線は人間の聴覚における、周波数ごとの聞こえ方感度についての曲線です。つまり、音程の高い、低い、様々な高さ(音程)の音が、人間の耳で同じ大きさに聴こえる音量(ラウドネス)を繋いでいって出来た曲線、ということになります。

詳しくはこちらの専門的なページがあります。

聴覚の等感曲線の国際規格ISO226が全面的に改正に

 産総研は国立の研究法人なので、信頼性は高いでしょう!より専門的な説明についてはこちらで。専門的な理解をする必要はほとんどないですが。

それでは、この曲線からどういうことが考えられるでしょうか?

次の3つのことが読み取れると思います。

  • 人間は音の高さごとに、聞こえ方が違う。
  • 音の大きさによって、その聞こえ方が変わる。
  • 低域、中域、高域という、単純な三等分は出来ない。

それでは一つずつ確認していきましょう!

音の高さごとに聞こえ方が違う

 人間の聴覚は20Hzから20kHzまでです。 中域が1番敏感で、低音、高音になるほど鈍感になっていき、同じ位の大きさに聞こえるために必要な音の大きさが大きくなっていきます。高いほど、低いほど人間の耳は感度が鈍くなっていく、ということです。(あくまで全体的な傾向です。細かくは後述)

 重要なのは人間の聞こえ方における、周波数(音の高さ、音程)音量(ラウドネス)の関係で、それがノンリニア(非直線的)な反応と言うことです。

 つまり、人間にとってのフラットなバランスに聞こえるための最適な各音量を図に表したり、数値化すると、それは数字上や機械上ではフラットではないということです。人間の感覚と数字のズレやギャップは、どの場面でも常に考慮しなければいけません。

 人間にとってフラットでも機械などにとってはフラットじゃないし、逆も然り。ミックス・エンジニアは、そうした機械と人間の折り合いをつけるのが仕事です。良いソフト、ハードというのは、そうした部分がギャップが少なくなるように設計されています。

FFT meter

 PCなどで音楽を聴けば、プレイヤーなどでFFTメーターを見ることが出来ると思いますが、市販のCDのその波形の多くは、基本的にこの曲線に沿った形になっているはずです。

人間と機械の感覚のズレ

 ミックスは機械を通して、音を加工、編集していきます。デジタルであれば、もはやあらゆるものは数値化されます。そしてミックスの際には、いろんなメーターを見て、視覚的に確認していくことも必要になりますが、視覚だけを頼りにメーター上でフラットになるように揃えていったら、当然聴覚的にはフラットじゃなくなってしまうわけです。その楽器ごとに支配的な音域は異なりますし、その音域ごとに適切な音量は違うからです。

 つまり聴覚的には良くない音、良くないバランスになってしまいます。なので最終的にはきちんと耳で確認することが大切になります。

 例えば、バスドラ、スネア、ベース、ギター、ボーカルの全てのトラックで、同じメーターの高さになるように音量を調整すると、おそらく低音の弱い、ペラペラな音あるいは耳に痛い音になってしまうはずです。

 あと実際の楽器の音などは、倍音を含め色んな音が鳴っています。なので、そのような1つの楽器にしろ、ミックス全体にしろ、それが人間にとって、ちょうど良いバランスに調整していくとなると、音に含まれるいろんな高さの音をそれぞれのふさわしい音量にすることが大切になってきます。そして、そのために必要なのが、この高さ毎に音量変えられるイコライザーです。

大きさによって聴こえ方が変わる

 次は大きさによって、その音の聞こえ方が変わるということです。図には複数の曲線が並んでいます。よく見ると、上下それぞれの曲線の形が微妙に変わっていることがわかると思います。

 上の方にいくほど、曲線が緩やかです。その変化については特に低音、高音はその傾向が顕著に出ています。

 という事はmixにおいて、極端に音量が変わってしまうと、音質が安定しないように聴こえてしまう、ということです。積極的に音量、ダイナミクス変化を付けていく場合は、ここらへんも考慮していかなければならないし、安定させたいなら、コンプなどを使わなければいけません。

 小さい音で聴いて大丈夫でも、音量を上げて聴いたら耳に痛い音だった。というケースも多いです。 特に低音は聞き取りにくいので、音量上げたら実はベースのモコモコした部分(boomy“ブーミー”な部分)が滅茶苦茶うるさかった、という場合も。

 ミックスをする上で、そのモニターの音量でバランスが異なって聴こえてしまう場合もあります。音量の大きさで、聴こえ方が変わってしまうことは、この曲線が示すように避けられないことです。しかし、 大きな音量であろうが、小さい音量であろうが、その音量なりにバランスが取れているか?ということを確認していくことが重要になります。

 なのでミックスの時におけるモニター音量については、常に意識しておくことが大事です。  音量による聴こえ方の違いは、バンドなどでも大事ですね。

低中高という単純な三等分は出来ない

 音質、周波数帯域バランスというものを考える時に、大体は低音域中音域高音域という3つの帯域に分けて考えます。

LOW – MID – HIGH

loudness curve figure

 一般的なミキサーについているイコライザーの分け方も、通常この3つの帯域です。  きちんと設計されているものならば、十分これだけでも音質調整は出来ます。(ギターアンプのイコライザーはギターの特性に合う周波数、掛かり具合に最適化されています。)

 しかし、mixでより細かなイコライジングをしていくとなると、より多くの帯域を自分で選択し、コントロールしなければいけません。 となると、ざっくりとした3つの帯域、という理解では上手くいきません。人間の聴覚の特性はもっと複雑(非直線的)だからです。

区分けもわりと不規則

 この曲線を見て分かるように、人間の耳の周波数特性というものは、決して3つの帯域に区分けできません。例えば1.5kHz付近はちょっと出っ張っていて、つまり少し鈍感です。トラックよってはブーストしてあげないといけない。

 また2kHzから4kHzあたりは大きく引っ込んでいます。 つまり、ここは人間の聴覚で最も敏感なところなわけで、大事だけども大きすぎると耳に痛い音になってしまうのです。

 というわけで、人間の聴覚に合った周波数の帯域の区分けは、少なくとも5〜6エリアくらいにわける必要があります。そして、その帯域ごとの性質を理解しなければなりません。

(ここらへんについてはいずれ別記事で解説できれば・・・)

 パラメトリックイコライザ(各バンドごとに周波数を選択できるEQ)が大体5, 6バンドなのはこういうことなんだと考えられます。音質の調整とは、イコライザでこれら各エリアの音量配分を調整する、といっても過言じゃないかもしれません。

ラウドネス曲線をどうミックスに使う?

 以上のような3つのことが、この曲線からわかることです。しかしこれらは見てわかることであり、実際のミックスにおいては、さらに踏み込んで考えなければいけません。つまり解釈したものをどう利用するか?

2つの注意点!

帯域全体よりすこし狭い方がまとまって聴こえる

 まずはオーディオにおいては、その周波数特性は必ずしも人間の聴覚範囲全体をカバーしていればいいか?というとそうでもなくて、すこし狭いくらいの方が良く聞こえる場合もあるということです。場合によっては、ローカット、ハイカットをバッサリ切ってしまった方が、かえって締まって、まとまって聴こえる場合もあります。(特に44.1kHzの場合)

自然なバランス感の目安に過ぎない

 次は、この曲線はあくまでフラットなバランス、中庸なバランスに聞こえるための基準でしかないということです。音楽のスタイルによっては、この曲線からある程度外れた方が良い場合もあります。

 このラウドネス曲線そのものに1番近いバランスのサウンドを持つ音楽は、管弦楽です。あらゆる楽器を同時に鳴らして、いい感じにするのが管弦楽法だと言えます。基本的には、生楽器、音楽ホールを前提にした音楽であり、そうではない音楽には、そのまま当てはめられないかもしれません。

 というわけでロックやヒップホップ、EDMなどのポップミュージックに、そのままこの曲線に基づく、 周波数帯域バランスを適用できるわけではないです。

 ジャンルごとに望ましい周波数帯域バランスというのはそれぞれ違います。ヒップホップ等は、当然この曲線以上に低音が強くなければヒップホップらしくならないわけで。あくまでこの曲線を基本としながらも、そのジャンルやスタイルにふさわしいバランスというものを見定めて、ミックスしていかねばならない、ということです。

楽器の持つ帯域特性

 以上はミックス全体のバランスに関してですね。それでは、楽器1つ1つはどうでしょうか?

 まず楽器は、各々に周波数特性があります。これは音色(timbre)ですね。また、倍音構成ともいいます。そして、音域ですね。低音、高音まんべんなく鳴らせたり、あるいは低音に強かったり、高い音しか出せなかったり。様々な楽器は各々の出せる音の範囲というものがあります。生楽器の場合、その範囲や弾き方で、音が変わることがあります。また低音担当、メロディ担当、高音域担当など、その曲における役割というのもあります。

 様々な楽器の音をFFTメーターで見ると、なんだかんだ1つの生楽器から様々な高さの音が出ています。ベースであっても、意外と高い音まで出てますし、高い音域を持つ楽器でも、意外とローが出てたりします。なのでアレンジにもよりますが、おそらくほとんどの場合、削っていかないとmix全体の周波数帯域バランスは崩壊してしまいます。

 ミックス全体が、この曲線に基づいた理想的なバランスになるように、個々のトラックの帯域に優先順位を取捨選択していく必要が出てきます。これには、その楽器や音の特性を理解していないと出来ません。

等ラウドネス曲線は、あくまで基準

 よって、まずはその楽器、パートの役割を理解して、どの全体のうち、どの帯域の音が大切かを見極めること。そして全ての楽器を鳴らした時に、ミックス全体が等ラウドネス曲線に沿った、その音楽にふさわしいバランスとなるように、各々個別の周波数バランスを整えていく必要があります。

余分な部分はカットする。大事なところは強調する、ということです。

 言わば分数ですね。 すべてを足したら1になるようにするということ。これがmixにおいての周波数バランスを整える、ということであり、等ラウドネスレベル曲線は、そのための道標であるということです。

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